戦後75年の節目、様々なメディアで戦争を振り返っての特集を目にされたかと思います。
今回ご紹介する『風太郎不戦日記』も、雑誌やウェブニュースの特集で何度か取り上げられたことがあるので、
すでにご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
漫画の原作は、山田風太郎の『戦中派不戦日記』。タイトルの「風太郎」は原作者の名前から取られています。
「忍法帖」シリーズなどで有名な原作者ですが、書いた当時はデビュー前。
東京で下宿していた一介の医学生であった彼の日記は、庶民の目線で書かれた記録としての評価も高く、
日本史の史料集などにも取り上げられています。
戦争に関することだけではなく、当時の物価、授業の様子、級友との会話、読書記録など、日によって様々な内容が綴られた原作を、
どのように漫画化するのか? 漫画として成り立つのか?
原作を知っていると疑問でしたが、綿密な取材のもと「画」として再現された当時の様子と、
人物の心情描写がとても自然な調和を見せて、あたかも戦時中を舞台にしたコミックエッセイを読んでいるかのような感覚になりました。
そして、だからこそ余計に、ひたひたと迫る不安や閉塞感が表に出てきた時の恐ろしさが際立ちます。
終戦記念日は過ぎましたが、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。
そして願わくば、原作者がタイトル通り「風太郎」として小説家となるまで、この漫画が続きますように!
【タイトル】風太郎不戦日記
【著者】 山田風太郎・勝田文
【出版社】 講談社
【ISBN】 9784065188606