警視庁草紙
山田風太郎・著
ISBN:(上)9784041356555(下)9784041356562
上・下巻 本体857円+税
角川書店
今年の大河ドラマの主人公の兄・吉田松陰の著書として有名な『留魂録』。それが世に出た経緯をご存知でしょうか?
その「解説」によれば、原本は明治九年、松陰の弟子であった野村靖(和作)が、安政の大獄当時に松蔭と相牢であった沼崎吉五郎からうけとったものであるとか。
しかし、吉五郎自身も島流しの刑を言い渡された身。服役中、過酷な環境の中でそれを如何にして守ったのか?
その謎を軽妙かつトリッキーに解いてみせたのが、今回紹介する『警視庁草紙』中の一編、「吉五郎流恨録」です。面白可笑しい吉五郎の活躍もさることながら、時代に翻弄されて変わっていく人間への悲哀と皮肉も随所にちりばめられた、味わい深い一編です。
他のエピソードももちろん粒ぞろい。しかも、登場する幕末~明治初期の実在人物の豪華なこと。妖しく、仄暗く、奇想天外な明治伝奇小説の大傑作!