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キリンビール高知支店の奇跡/田村潤著/講談社+α新書/842円

 キリンビールといえば創業100年を超える老舗。業界でも60%を越えるトップシェアを誇り、ビールといえばキリンといわれた時代が長く続いていた。しかしアサヒスーパ-ドライの躍進によりトップシェアを奪われてしまうことに。著者はそんな中、社内でも代表的苦戦エリアといわれる高知支店へ異動することに。そこで起きるさまざまな苦労や挫折。しかし多くの壁にぶつかりながらも見事トップシェアを勝ち取り、それを四国、東海、全国へと発展させた著者の成功物語である。

 とは言え、一度離れたお客様を再び戻す事は並大抵のことではない。特にここに書かれている高知支店での戦いは、対アサヒだけでなく負けている組織の風土との戦いでもあり、見事首位を奪回した時には大きな感動を覚え、勇気も与えられた。

 ここに書かれていることで大きなポイントが1つ。それは「現場に本質がある」ということ。机上で考えだされた空論ではなく、常に現場に足を運びリアリティを大事にする。また上から命令された施策や企画を忠実にこなすのではなく、その土地の県民性にマッチしたマーケティングや商品企画を主体的に考え、ビジョンを達成するために行動する。昔、「事件は会議室で起きているのではない~」という決め台詞の映画があったが、正にすべては現場にいかないとわからないということである。そして、そこには起死回生の一発など無く、あるのは愚直なまでの地道な努力だけなのだ。「凡事徹底」こそ最大の武器であることを改めて痛感させられる。

 梅雨も明け、猛暑が続く毎日。この時期の仕事後に飲むビールの美味しさは、この一瞬の喜びの為に仕事をしていると勘違いさせられるほど。さあ、今日も帰って冷えたビールを飲むとしよう。