「嫌われる勇気」
岸見一郎/古賀史健 著
ダイヤモンド社
本体価格 1500円+税
フロイト、ユングと並び「心理学の三大巨頭」と称され、
欧米では絶大な支持を誇るアルフレッド・アドラー。
そのアドラーの思想を「青年と哲人の対話編」という物語形式を用いて、
「どうすれば人は幸せに生きることができるか」という事についてまとめたのが本書である。
人には大なり小なり不満や悩みがある。著者曰く、人間は、全く他人とかかわらず生きていくという事は出来ず、孤独を感じるのにも他者を必要とする。そして、そのすべての悩みというのは「対人関係の悩み」であるという。このアドラー心理学の根底に流れる概念をもとに話は進められていくのである。
対人関係においてその全てのトラブルは他者の課題に土足で踏み込む事、あるいは自分の課題に土足で踏み込まれる事によって引き起こされる。
実際、職場での上下関係や家庭での親子関係等、対人関係は様々。私自身職場での部下指導や子供への教育等、常に悩みはつきないのだが、それはあくまでその人(子)本人の課題であって私自身の課題でない。「部下が仕事をしない」=部下の課題、「子供が勉強しない」=子供の課題、といったようにそれは誰の課題なのかを明確にする。それが「課題の分離」という考え方である。とはいえ実際にはそんな簡単な事でもないだろうが、物事を考える上では非常に参考になるだろう。
自分の人生は自分で決める。しかし、人はどうしても自分の置かれた境遇や、過去の自分を理由にマイナス的な思考に陥りがち。それでも自分の人生は自分で選択するのであって他人が決める事ではない。
「過去にとらわれず、自分の今後の人生をどう生きるかを自分で決める」、
「人に嫌われる事を恐れず自分が幸せになる為の勇気を持つ」、
その一助に十分なり得る良書である。